43 目の前に札束が現れた。修はそれに飛びつき、両手で札束を抱え込むようにして捕まえようとした。だが札束はバタバタと、紙幣一枚一枚を羽ばたかせながら飛んで逃げようとしだした。 「待て! その札束で僕は新作ゲームを買うんだ!」 修の背中にジェットエンジンが現れた。修は片手を背中にまわし、それのスイッチをオンにした。するとものすごい音でジェットエンジンが起動した。 エンジンが起動した直後、修の体は宙に浮かび、そのまままっすぐと逃げる札束に向かって発進した。ものすごいスピードだ。今の修にはスペースシャトルですら追いつけないであろう。 すぐに札束に追いついた。修は手を伸ばすと簡単に札束を手にすることが出来た。 「やったー! これで新作ゲーム買い放題だー!」 両手で札束をしっかりと持ったまま喜んだ。だがそれもつかの間、修は突然数十人の人間に囲まれた。 「おい修、その札束俺にくれよ」 一人の男が言った。修はその男に見覚えがあった。修のクラスメートだった。 「渡さないよ。これは僕のだ!」 修はしっかりとそれを拒否した。すると男、 「ならお前には死んでもらうしかないな」 そう言いながらポケットから拳銃を出し、それを修に向けた。 まさか、こいつ本気なのか? 男の行動に心底驚いた。だが次の瞬間、予想もしていなかった出来事が起こった。 「まちな、それは私のもんだよ」 男の隣にいた女(これもクラスメートだ)がその言葉とともに、スカートのポケットから取り出したナイフでその男を刺した。男はすぐに絶命した。 「さあ修、こいつみたいになりたくなかったら、さっさとその金を私に渡しな」 女は手招きした。だが直後、今度はその女が日本刀で斬られた。 「あの金は俺のだよ!!」 さっきとは別の男が日本刀を構えながら言う。 「いやいや、あれは私のだよ」 「俺のもんだ」 「てめえら、俺のもんに手出しするんじゃねぇよ!」 「私によこしなさいよ!」 皆がそれぞれ勝手なことを言い出した。修には訳が分からなかった。 なんなんだこいつらは? すると今度は札束をめぐって、修を囲んでいたクラスメート同士が殺し合いを始めた。バタバタと次々にクラスメイトたちが死んでいった。そして最後に一人が残った。 「お前で最後だな」 その最後の一人が血まみれになりながら修に銃を向けた。 「ま、まさか!! よせ! 撃つな!!」 修の必死の言葉に耳をかすこともなく、最後の一人は銃を撃った。 ドンッ!! 「うわあっ!!」 福本修(男子21番)は驚いて飛びおきた。あまりの恐怖で体中が汗びっしょりである。もちろん気温の高さのせいもあったのだろうが、この汗はほとんど恐怖感による汗であろう。 「ゆ、夢か…」 体に異変がないのを確認した修は、それが夢であったとすぐに理解した。 いやな夢だった。おそらくプログラムに対しての恐怖がこんな夢を見させたのだろう。 修は普段から、授業中だろうが休み時間中であろうが関係なく、とにかく学校に来ている間はほとんど眠っているような人間である。そのためにクラスメイトたちからも、遊び人ならぬ『眠り人』とさえ呼ばれていた。そんな修だ。いくら殺し合いプログラムに参加させられたといっても、眠いものは眠い。 分校を出発してしばらくし、とある集落に到着した修は、ある一軒の民家の入り口の鍵が掛かっていなかったのでその中に入ったのだ。(もちろん島の住人は全員出て行っているので、家の中は無人であった。)そしてそのまま中で眠ってしまった。それが大体6時頃の出来事である。 修は時計を見た。今現在11時50分であった。要するに6時間ほど眠っていたようだ。 しかしそれにしても、こんな殺し合いゲームの最中、よく眠れたもんだ。 修はつくづく自分の図太さに感心した。だが、いくら6時間眠ったとはいっても、その程度では修にとってはまだ眠り足りなかった。 どうしようかな。もう一度眠ろうかな。 修は窓の側に移動し、そこから外を確認した。付近には誰もいないようだ。 安心した修は決めた。もう一度寝よう。大丈夫だろう。ここは民家の中だ。見つかる事も無いだろう。 修はかなり楽観的にそう思い、安心して再び寝ようとした。 修が熟睡するまで時間は一分とかからなかった。さすがは眠りのスペシャリストと言ったところだろう。しかし意外な終わりは突然訪れた。 ボンッ!! 熟睡し始めたばかりの修を突然の爆発が襲った。 首輪だ。首輪が爆発したのだ。 「痛い」と思う間もなく、修の首は引きちぎられた。 修は気付いていなかったのだ。眠っている間に7時の放送を聞き逃してしまった事。そして、修がいたエリアはD=2。まさしく12時からの禁止エリアであったことに。 『福本修(男子21番)・・・死亡』 【残り 25人】 トップへ戻る BRトップへ戻る 42へ戻る 44へ進む |
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