34 須王が前に突き出したチェーンソーは、昭夫の胴体へ向かっていった。 「ハハァッ! 死ねぇ!」 須王のその言葉が合図のように、チェーンソーは昭夫の胸部に突き立てられた。バリバリッと音を立てながら、昭夫の制服は高速回転する刃によって、一瞬にして切り裂かれ、チェーンソーはそのまま昭夫の胸部から体内へと入っていった。 「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 昭夫は激痛のあまり絶叫した。 高速回転するチェーンソーに引き裂かれた昭夫の胸部の肉片、そして血はもちろん、内臓の一部と思われるものまで辺りに飛び散った。 「まだまだぁ!」 須王はチェーンソーを昭夫の体内から引き抜くことなく、まだ回転し続けているチェーンソーで、昭夫の体内をかき混ぜるかのように、グリグリと動かし始めた。 昭夫は絶叫し続けていたが、しばらくすると声が止まり、目を大きく見開きながら口を半開き状態にして、そのまま全く動かなくなってしまった。須王はそれを見て、やっとの事で昭夫の体から、チェーンソーを抜き取った。 刃が回転し続けているチェーンソーが、昭夫の体から引き抜かれた瞬間、チェーンソーに引きずられるかのように出てきた、内臓の一部と、血液が再び派手に飛び散った。 昭夫の胴体にはぽっかりと大きな穴が空き、そこから内部でピンク色をしたゼリー状の物体が砕かれた様が、容易に確認することができた。それは昭夫の内臓が、まるでミキサーにかけられた後のような光景であった。 「あ、昭夫…?」 出血し続けている肩を押さえながら、信平は恐る恐ると昭夫に呼びかけた。だが返事は一向に返ってこない。 「無駄だ。こいつはもう死んだ」 須王に言われなくとも、それは昭夫の姿を見ただけでも一目瞭然だった。だが、信平はそれを信じることが出来なかった。 うそだろ。あいつは剣道部で最強の男だぞ。昭夫は顔はいかついけど、俺に剣道を教えてくれた良い奴だったんだ。そんなあいつが死んだ…? 信平の心の中は悲しみで満たされた。だが次の瞬間、心の中は一瞬にして悲しみという感情を押しのけて、恐怖という感情が支配してしまった。そうなのだ。昭夫が殺された今、次に須王の標的となるのは、当然目の前にいる信平自身であるのだ。 案の定、須王は視線を昭夫の亡骸から信平の方へと移した。 「じゃあ次はお前の番な」 焼け爛れた顔と同じく、須王の口調がまた一段と不気味に聞こえた。 「や、やめてくれ!」 言ったものの、須王が見逃してくれるはずなどないとは思っていた。しかし、 「そう言えば『死のう』と言ってたのは剛田の奴だけだったな。なるほど、じゃあお前は見逃してやろう」 信平は返ってきた思いがけない答えに驚いたが、次の瞬間、 「ただし…」 そう言いながら信平に近寄ってきた須王は、突然信平の右太股にチェーンソーを突き立てた。 「ぎゃぁぁぁぁ!」 信平の右太股から、昭夫の胴体の時と同じように、肉片と血液が飛び散った。信平はその痛みに耐えきれず、声を張り上げた。 須王は信平の股からチェーンソーを抜いた。抜いた瞬間、信平にチェーンソーを抜くときの激痛もが襲いかかった。 太股を深く裂かれた右足は、もはや全く動かなかった。 「その体で俺から逃げ切れたら見逃してやるよ。じゃあ俺はお前がスタートした後・・・そうだな、20秒後にスタートな。んじゃあ早速、スタート!」 須王がそう言いきる前に信平は這いつくばりながらその場を逃げようとした。フライングだろうとなんだろうと構わない。とにかくその場から逃げるのに必死だった。 だが右側の足と手が動かない体では、上手く逃げることが出来なかった。 「…3、4、5…」 須王は背後で、必死で逃げる信平を見て、ニヤニヤと笑いながらカウントをしていた。 「…9、10、11…」 信平は最高潮に達した腕と太股の激痛に耐えながら、今動かせる左手と左足だけを必死で動かした。その様はほとんど芋虫状態で、無様以外の何者でもなかった。 「…18、19、20。ハハッ、じゃあ行くぞ!」 カウントを終え、須王は信平に向かって行った。信平と須王の間のその距離たったの10数メートルである。走るまでもなかった。 まだ必死に逃げようとし続けている信平が振り返ると、須王は歩きながら近づいてきた。 「はい、ゲームオーバー!」 信平の背中から体の中にチェーンソーが入っていった。少しすると、そのチェーンソーは信平の胸から出てきた。 胸と背中からいろんなモノが飛び出してきた。その中には心臓の欠片も含まれていたかもしれない。 もう体のどの部分も動かせなくなった信平は、ドサッと倒れた。そして目の前が真っ暗になったきり、もう須王の姿が見えなくなった。 須王はチェーンソーを引き抜くと、信平の制服で適当に刃に付いた血などをぬぐい取った。 『剛田昭夫(男子8番)・・・死亡』 『野村信平(男子18番)・・・死亡』 【残り 29人】 トップへ戻る BRトップへ戻る 33へ戻る 35へ進む |
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