ホワイトデビル
エピローグでの蓮木風花の独白でもあったように、体内への投与方法は複数ある。火で炙って煙草の要領で煙を吸う、という方法と、注射器で直接血管に送ると、いう二つが主流。作中では注射器による投与を行う者しかいなかったが。
尚、注射する回数に応じて効果が倍増していくようで、それに応じて、おのずと副作用も酷いものとなっていく。
ここでは注射した回数ごとに、三段階のレベルをつけて症状を説明していく。
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経験者:御影霞、黒河龍輔、後藤蘭
ホワイトデビルの注射一回目。痛覚が薄れ始め、擦り傷程度の浅い怪我なら痛みをほぼ感じなくなる。身体が軽くなり宙に浮くような錯覚を覚えることもあるようだ。
身体中に若干の痺れが広がり、これを快楽に思う者が多い。この快楽を一部の人間は『白き悪魔の抱擁』と称している。
筋肉も引き締まるようだが、遠目には普段との違いはまだ分かり辛い。とはいえ、実際に運動能力は格段に上昇するため、戦闘時においては相手が強力な武器をもっていたり、よっぽどの超人だったりしない限りは、有利に事を進められるはずである。
腕力が上がると銃撃の反動にも耐えられるようになり、作中で御影霞は、サブマシンガンを乱射する里見亜澄を遠距離から一発で撃ち抜くことに成功した。
また、私物として自らホワイトデビルをプログラム会場に持ち込んでいた唯一の生徒、後藤蘭は、疲労回復や眠気解消を理由に、日常から薬物吸引を行っていたようだが、プログラム中は運動能力向上を目指し、珍しく注射器による投与を行った。しかし殺人機械と化した白石桜には全く敵わなかった。
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経験者:御影霞、黒河龍輔
ホワイトデビルの注射二回目。心拍数が急激に上昇した影響で血液の循環が過剰になりすぎて、身体中の血管が表面上に浮き上がり、目は充血して赤くなる。呼吸が猛獣のように荒くなったりもすることがあり、相手は威圧感を覚えることとなるであろう。
一度目の注射の際よりも、筋肉は隆々と膨れ上がり、黒河龍輔は腕力のみで木の幹を掴んで固い樹皮を砕いて見せた。
このころにはもはや、あらゆる痛みを感じなくなっている。
ただ、短時間でホワイトデビルの注射を連続して行うと、身体にかかる負担が大きすぎる。このLEVEL2ですら既に限界に近い状態であるため、これ以上の投与はたいへん危険である。
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経験者:御影霞
ホワイトデビルの注射三回目。筋肉のふくらみはMAXを向かえる。脈が波打つスピードはさらに速まり、身体の表面のそこかしこが小さな虫に寄生されてしまっているかのように、ビクンビクンと動くのが見える。もはや一回目の注射以前よりも身体のサイズが大きくなっていることは一目で分かってしまう。
確かに戦闘能力は最強と言えるかもしれないが、危険区域を完全に越えてしまっているここまできてしまうことは、自らの身体を急速に破壊してしまう愚かなる行為としか言い様が無い。
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エンゼル
投与方法はホワイトデビルと同じく、吸引と注射といった複数の方法がある。そして投与を重ねるごとに症状が酷くなっていくという点も、ホワイトデビルと同じと考えられる。
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経験者:山峰道夫
エンゼルはホワイトデビルよりもさらに「負」の要素がとても大きい。日常的に使用して依存症に陥ってしまえば、その先には人生の破滅しか待っていない。
湯川利久の父親、山峯道夫は末期には、目が据わって、手足が小刻みに震えだしていた。まともな意思の疎通もできなくなって離婚を招き、最後は幻覚症状の中で灯油を被って焼身自殺をしてしまった。
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経験者:松乃中等学校生徒全員
二年前、松乃中等学校の生徒は全員、火事の中で気化したエンゼルを知らず知らずの間に吸引していた。
火災が発生した時に、エンゼルが保管してあった理科準備室のより近くに居た者ほど酷い症状に襲われていたとみられる。
手足の痺れを起こし歩行できなくなった者。幻覚症状の中で三階の窓から地面に向かって飛び降りてしまった者。興奮状態に陥って殺人を犯してしまった者。冷静な思考力を欠いた結果、我先にと押し合いながら逃げ惑い、脱出口へと続く通路に人詰まりを発生させた者達。
大抵の者にとって、それらの中毒症状は一時的なものだったはずだが、氷室歩の幻覚症状のように、事件から数年経ってからもフラッシュバックを繰り返す者はいたようだ。 |