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 男子生徒は友子の首に突き刺さっている鎌を抜いた。瞬間、友子の首からはおびただしい量の血液が飛び、男子生徒の制服にかかったが、その生徒は特にそのことは気にしなかった。
 中の上くらいの高さの身長で、二重まぶたと、冷たい視線が特徴的なその顔。それは
狩谷大介(男子5番)であった。
 大介はヒュッと一度鎌を振り、刃の部分に付いた血を軽くとばした。
 実にラッキーであった。とにかく自分以外の邪魔な生徒達を殺していこうと思っていたところに、出くわした友子が、大介に全く気が付いておらず、無防備な背中を見せていたのだ。このチャンスを逃すわけがなかった。
 鎌に付いた血を制服の袖でふき取った大介は、地面に倒れている友子の体を蹴り飛ばした。友子の体は2メートルほど転がったが、そこで岩にぶつかって止まった。友子の体中に新たに出来た傷から血がにじみ出していた。
 ふと横を見ると地面にはスタンガンが転がっていた。
 なんだよ! こいつの武器これかよ! シケてるな!!
 大介はスタンガンを一度拾い上げたが、すぐに元あった場所に投げ捨てた。
 またそのすぐ側には透のヌンチャクも落ちていたのだが、それは岩影に隠れていたので大介は気が付かなかった。
 誰かを殺したら鎌よりももっと良い武器が手にはいるかと思ったにの、結局これかよ。スタンガンだったらまだ鎌のほうがマシだ。
 用が済んだ大介はすぐさま洞窟をあとにした。
 外は少しずつ明るくなってきていた。とは言ってもまだまだ薄暗いが、夜明けが近いということは確かだ。先ほどよりも、辺りの様子がはっきりと分かるくらいの明るさにはなっていた。
 大介はたった今、獲物を捕らえたばかりだったが、特になにも収穫できなかったことが不満だったため、また次の獲物を探そうと思った。
 次の獲物こそ、良い武器持ってろよ。
 大介がそう思ったときだった。大介の視界の中に、林の中で動く一つの影が入ってきた。明らかに人間の影である。つまりは獲物だ。
 大介は再び鎌を握りしめ、林の中の影の方に、少しずつ近づいていった。幸い、まだ獲物の方はこちらの存在には気が付いてはいないようだ。
 気づかれないように、そっと近づいていくうちに、次第に獲物の姿が鮮明に見えるようになってきた。どうやら男子生徒のようだ。背はあまり高くはない。むしろ低い方だ。
 桜井か?
 大介は獲物の正体は、クラス内で最も背の低い
桜井稔(男子9番)ではないかと考えた。シルエットもそんな感じに見える。だが、さらに近づいていく内に、その予測が間違っていることが分かった。さすがにこれだけ近づけば、はっきりと相手の姿が見える。
 濃い眉、短く切った髪、そして気の弱そうな表情。間違いない、
坪倉武(男子13番)だ。
 鎌をさらにしっかりと握りしめた。そのとき大介の顔は獲物を狙うハンターの顔へと変貌していた。



【残り 33人】



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